しばらく一緒に歩いていると、1年生たちは分かれ道を右へと曲がった。


それは和斗の通学路ではなかったけれど、和斗は迷わずその背中を追いかけた。


この方向は池のある方向だったし、ここまで見守ったのだから最後まで見守ろうと決めたのだ。


そう決めてしまうと迷いはなかった。


通学路が違っても、1年生たちが立ち止まって野花をつんでいても、和斗はずっとついて行った。


おちゃべりに夢中になった1年生が赤信号で渡ろうとしているのを見た時は、思わず声をかけてしまった。


1年生は驚いた顔をしていたけれど、和斗に頭を下げて「お兄ちゃんありがとう」と、丁寧にお礼を言ってくれた。


危険な池も通り過ぎて、これでひとまず安心かなと胸をなで下ろした時だった。


突然強い風が吹いて1年生の黄色い帽子がフワリと浮かんだ。


その子は帽子のゴムを顎にかけていなかったのだ。