女子たちが言っていた通り、自分が中学生くらい大きければ小学5年生の愛花ちゃんに話かけることだってできたかもしれない。


お兄さんとして、愛花ちゃんの手を握ったりもできたかもしれない。


そんな事を悶々と考えていたらあっという間に放課後になり、和斗は走って校門を出た。


学校前にある長い階段を一気に駆け下りるのが好きだった。


低学年のコロンはできなかったけれど、今では風のように走ることもできるようになった。


少しは大人の男に近づいている。


自分自身を慰めるようにそう思った時、和希は急ブレーキをかけて立ち止まった。


階段を塞ぐようにして数人の1年生が歩いている。


1年生たちの足は遅く、話しながら歩いているため時々階段を踏み外しそうになっている。


見ているとだんだん不安になってきた和斗は、1年生たちの後をゆっくりと歩き始めた。


朝、集合してから列を作って学校まで行くときのように、後ろから小さな背中を見守る。


階段を下がり切り、ほっとしたのもつかの間。


今度は信号機だ。


1年生たちは「赤信号だよ」「そうだね。青になるまで待つんだよ」と会話しながらちゃんと足を止めた。