タヌキにとって悩みとは、縄張り争いや食べ物の危機といった類の物がほとんどだった。


分かりやすく、そして壮絶だ。


それに対して今のタエはそのどれにも属さず、かつ危機的状況ではなかった。


ただぼんやりと、ある一定の異性に対して好意を抱いている。


ただそれだけのことだった。


どう考えても一大事なんかじゃない。


生きるか死ぬかの野性的な危機とは全く別物だった。


タエはテーブルの上に置いたレシートを見て、ため息を吐き出したのだった。