「嫌よ。私は今日この場所で死ぬって決めているんだから。そっちへ行きたい」


「何言ってるんだ。君がいなくなったら僕が生きていたと言う記憶も一緒に消えてしまう。


そんなの、僕が辛いじゃないか。生きて、僕との記憶を思い出してほしい」


過去の思い出にすがって生きて行くなんて嫌だ。


すぐ目の前に好きな人がいて、その人に触れていたいと思うのはダメなことなんだろうか。


そう言いたかったけれど、涙で言葉が沈んで行ってしまった。


「もう1度言うよ。君は1人じゃない。孤独なんかじゃなんだよ」


旦那はそう言うとスッと姿を消して、目の裏に残ったのは真っ暗な世界だけだった。