「あれ?看護師さん?」
小首をかしげる男の子は、昔の伊吹によく似た感じのイケメンな男子高校生。
伊吹にもこんな時期があったなと、ついまじまじと見つめてしまうと彼は私の顔を見て声を上げた。
「あ、伊吹兄さんのお嫁さん!」
あれ?私ってば知られてるの?
そう思って小首をかしげていると、大きな音がたつ。
「すぱーん!」
いい音がして、目を見開いてしまう。
すると彼の背後に結実ちゃんが立ち、どこから持ち出したのか丸めた新聞で頭を叩いていた。
「圭人、まずは自己紹介なさい!デカい図体で気の利かない!」
「結実。お前もう少しお淑やかにしないと、とてもじゃないがあの人は落ちな……」
「黙らっしゃい!おバカ圭人!」
スパァーーン!!
「だー、地味に痛てぇよ!この馬鹿力!」
なんか、目の前で繰り広げられるコントのようなテンポの良いやり取りに、ポカーンとしているとベットの真穂ちゃんから鋭い声が飛んだ。
「いい加減、黙れ双子!圭人、ちゃんと挨拶しな!」
真穂ちゃんの鋭い声にようやくふたりは止まった。
「あ、えっと結実の双子の弟で小川圭人です。よろしくお願いします」
ペコっと頭を下げるあたり、圭人くんは伊吹と違って素直な感じがした。
「私は大石千花です。伊吹の奥さんになったから、今後は会ったらよろしくお願いしますね」
余ってたプリンを圭人くんも食べて、少し話したあと、私は再び仕事に戻ったのだった。