こうして結婚初日を甘やかに過ごして翌日、大石になって初めての出勤。

伊吹に聞けばネームプレートから何から、もう既に大石への切り替えはバッチリ整っているという。

忘れていたけれど伊吹はうちの病院の跡取り、次期医院長である。

昨日のうちに入籍を済ませることを考えていたのだから、そこら辺の手続きに抜かりは無い。

しかし、私はその伊吹が独身女性垂涎の玉の輿物件な事を思い出して顔色をなくしていた。

「あぁ!どうしよう。私、職場で生きていけるかな」

思わず顔を青くして呟くと、伊吹がサラッと言う。

「千花。俺は千花への気持ち隠してないって言っただろ?職場の人達からしたら、やっと結婚したのね!おめでとう。位しか言われないように周知徹底しているから何も心配要らない」

私の作った朝食を食べながら、さも当たり前の様に言う伊吹に驚いてしまう。

「え?そんな事誰にも聞かれたこともないよ、私は!」

びっくり目を見開いて叫ぶ私に伊吹は、至極当然という顔をして答えた。

「そりゃ、千花に聞かなくても俺に聞けばすぐに答えるんだから聞く必要ないだろ?俺がナースステーションに行けば皆が千花を呼んでたろ?そういう相手だと思っての行動に決まってるじゃないか」

実にそれがどうした位にあっけらかんと言われてもう、何も言えなかった。