隣でスヤスヤと眠る彼女を

抱き寄せながら、

今日の出来事を振り返っていた。

繁華街にあるスポーツ用品店に

バッシュを新調しようと

向かっていた俺の視線の先に

見たことのある男が流羽に

キスをしたのを見て、

俺の頭の中は一瞬、真っ白だった。

でも、次の瞬間…

涙を流す流羽を見て、

身体中の血が沸騰したのが

分かった。

たくさん辛い目にあってきた

からこそ、いつも笑っていて欲しい。

なのに、今道路を挟んだ

向こう側で流羽は1人、泣いている。

口元を何度も何度も拭い

涙を流す流羽が、愛おしいと

思った。

それは俺だけに許された

行為だと思えたからだ。

そんな事を考えている俺に

気付いた流羽は、呆然と

立ち尽くして、不安げに

瞳を揺らしている。

流羽の前に立つと、流羽は

俯きながらも、ひたすら唇を

拭い続けていて、薄っすらと

血が滲んでいる。

もういいから…

そんな事しなくても大丈夫…

流羽が望んでした事ではないこと

くらい分かってるから…

俺の言葉に涙する流羽を

俺は抱き締めた。

そして、流羽を泣かせたコイツを

殴ってやりたいと思ったが、

心底反省しているのを見て

やめた。

あれだけ涙していた流羽は

はっきりとした口調で、

相手に真摯に向き合ってみせた。

強いとは思っていたが、

やっぱり流羽は強い…

そして、心底優しい。

だからこそ、コイツも流羽に

惚れたんだろう。

でも、流羽は俺のものだ。

絶対誰にも渡さねー。

ホームまで流羽を送るなか、

話がしたくて公園に連れて

きたのはいいが、こういう時

なんて言えば流羽は笑って

くれるんだ?

とにかく安心させたくて

声をかけようとしたら、

流羽も話そうとしていたのか

お互いの声が思いっきり

被っちまった。

なんてタイミングだよ…

けど、声が被った事に笑う

流羽はいつもの笑顔で

俺は心底ホッとした。

ポツリポツリと話す流羽は

申し訳なさそうな顔をしてるが

俺は逆に嬉しいと思っていた。

全てが俺の為にしてくれたんだって

分かったから…

でも、正直に言えば

俺以外の奴に触られたり

キスされたりするのは

めちゃくちゃ嫌だ。

だから、今すぐアイツの

存在を流羽の中から

消してしまいたくて、俺は

『今すぐ流羽が欲しい』と

伝えた。

そんな俺の勝手な嫉妬心に

全く気付く事なく、流羽は

『わたしは翼くんのものだよ』と

笑顔で言った。

ほんと、俺の彼女は

鈍感で天然だ…

そこが可愛いくもあり、

少し憎たらしい。

ほんとに憎いわけじゃねーけど…

そして、鈍感で天然な流羽は

俺の家に辿り着いて、やっと

俺の言葉の意味を分かったようで、

顔を真っ赤にしている。

くそ可愛いんだっつの!

制服のままの流羽に、俺の

着替えを渡してリビングに

降りた俺は、飲みもんを取り

部屋に戻った。

俺の部屋で所在なさげに立つ

流羽の部屋着姿は、

破壊力抜群で、目のやり場に

困った。

明らかにサイズの合わない服で

足も手も全く見えていない。

そのくせ、ちゃっかり胸元だけは

ガッツリ開いていて、隙間から

流羽の白い透き通った肌が

見えている。

髪を軽く結い上げた首元が

妙な色気を出していて、

俺の理性はショート寸前だ。

膝の間で小さくなる流羽は

分かってはいたが、やっぱり

小さくて、柔らかい。

あーくそ!

なんだってこんなに可愛いだよ!

俺の理性はもはや制御不可能。

気付けば首にキスをしていた。

驚いて振り返る流羽に、俺は

執拗にキスをし続けた。

夢中になり過ぎた俺が流羽を

伺うと、目がトロンとしていて

力なく俺の胸に寄りかかっている。

普段は可愛いのに、こういう時

決まって流羽は綺麗な女になる。

ほんと敵わねー…

ベットに寝かせると、トロンと

した瞳のまま俺を見つめる流羽。

ほんのりと色付いた頬と

服の間から見える白い肌に

俺は吸い寄せられるように

手を伸ばして、流羽の全てに

キスを落とした。

その度にピクッと反応する

流羽が可愛くて、

もっともっとと触れ続けた。

『愛してる』と

自然に口をついた俺に、

『わたしも愛してる』と

笑った流羽に、俺の全部を

注ぎ続けた。

疲れて眠る流羽に

「絶対に幸せになろうな」と

呟いた。