もうすぐ11月半ばという時…

記憶が戻った流羽は、今日も

一生懸命マネージャーの仕事を

頑張っている。

小さな身体で、ちょこちょこと

動き回る姿は、小動物みたいで

めちゃくちゃ可愛い。

それに、元々可愛い顔立ちに加え、

少しずつ綺麗にもなっていく姿は

嬉しいような、複雑なような…

俺だけが知っているという、

優越感に浸る暇もないほどに、

ここ最近、流羽は視線を浴びている。

けど、流羽自身は、

それに全く気付いていない。

他人からの奇異の視線には

敏感なのに、好意の視線には

ドがつくほど鈍感だ。

またいつかの時みたく、声を掛けて

くる奴もいるかもしれないという

俺の気持ちなど、知るよしもない

俺の可愛い彼女は、今日も

花が咲いたように笑っている。

練習に励みながらも、気付けば

目は流羽を追っている。

駄目だな、集中しねーと!

そう思った時だった…

隣のコートにいるバレー部の

男が、流羽に熱い視線を送っている。

誰だ?…あいつは。

1年にあんなデカイ奴はいないはず。

だとしたら、上級生か?

それにしても、お前見過ぎだっつの!

俺の視線に気付いた男が、一瞬

ギクッとした顔をした。

そして、その日はそのまま

男が流羽を見る事は

1度も無かった。

次の日の放課後、久しぶりに

部活が休みになり、流羽と一緒に

帰ろうと誘うも、用事があって

一緒に帰れないと

言われた俺は、少しばかり…

いや、かなりへこんでいた。

けど、それよりも

引っかかっていた。

流羽の異常過ぎるほどの反応と

視線を泳がせながら、説明する

姿に…

何か隠しているのは、

誰が見たって一目瞭然だったけど

流羽がそこまでして

隠そうとする理由を、俺は

敢えて問い詰めたりはしない。

だって、流羽が俺を傷付ける事は

絶対にないと自信を持って

言えるし、思えるからだ。

だから、話せる時がくれば、

話してくれるだろうと

考えていた。