バイトにも慣れて、常連さんとも

談笑できるようになった頃…

目を合わせて話してくれなかった

隼人さんも、慣れてきたのか

目を合わせて話してくれるように

なって、ますますバイトが

楽しくなっていった、わたし。

バイトも明日で最後。

翼くんのプレゼントを

リストバンドに決めた

わたしは、隼人さんに

この辺で品揃えのいい

スポーツ用品店を教えて

貰うため、お客さんが引いたのを

見計らって、話しかけた。

「あの…隼人さん、

リストバンドを買いたいんですけど

この辺で大きなスポーツ用品店

ご存知ないですか?」

すると、

「俺がよく行く店なら、

行く予定があるから

良かったら案内するよ」

と、言ってくれた。

「本当ですか!?

良かったー…

わたし、スポーツ出来ないから

そういうのに疎くて。

隼人さんが一緒なら安心です!

案内お願いしてもいいですか?」

ホッとした気持ちで、

隼人さんを見上げると、

何故か顔を赤くしてしまった。

どうしたのかな?

わたし、変なこと言った?

何の返事もない事に、不安を

感じたわたしが、下から

覗き込んでみると…

目を見開いた隼人さんと

目が合った。

「どうかしたんですか?

どこか具合でも…」

背伸びをして、隼人さんの

おでこに触れると、

隼人さんが一歩後ずさった。

「あ…ごめんなさい!

急に触っちゃって。

熱でもあるのかと思って、つい」

身振り手振りで言い訳をすると、

手の甲で口元を隠して、

「だ、大丈夫!

何でもないから!

明日にでも案内するよ」

そう言って、奥に下がってしまった

隼人さんに、わたしは首を傾げた。

本当に大丈夫かな?

一瞬だったけど、顔も赤いし、

おでこも熱かった…

風邪でも引いたのかな?

誰もいない店内で、首を傾げながら

考えている姿を、隼人さんが

見ているなんて思いもしないで…