親子って、どこかしら

似るものだと思ってたけど…

そうでもないのかな?

その時、晴人くんが

難しい言葉を使って、びっくりした。

「春瀬さん、反面教師ですよ」

「へっ!?」

クスクス笑いながら、説明して

くれる。

「親がこんなだから、逆に子供は

落ち着いた感じになるんです。

なっ?兄ちゃん!」

「そう言うこと」

そうなの?

わたしには、家族経験がないから

いまいちピンと来ないけど、

そういうものなんだ…

へぇー…家族って

おもしろい。

わたし達が話すあいだも、

お父さんとお母さんは、

2人でキャッキャッと

盛り上がっている。

すごく、仲良し夫婦なんだな!

なんだか、微笑ましい光景で

ちょっと羨ましいかも…

2人を見つめていると、

翼くんが、爆弾を投下してきた!

「俺らは、こうならないように

しような」

っん!?

俺らはって…

それって…それって…

びっくりし過ぎて、声にならない

声で、肩をわざとらしくすくめる

翼くんを見た。

そして、

真っ赤になっているだろう顔を

下を向いて誤魔化した。

すると、盛り上がっていたはずの

2人が、ズイッと顔を寄せて

「あら、プロポーズ?

お母さんは大賛成よー!

こんな可愛くて、優しい

流羽ちゃんなら、今すぐにでも

オッケーよ!」

「父さんも大賛成だっ!

いやー、俺にも娘が出来るのか!

めでたい!」

翼くんを押しのけて、

わたしの手を握る2人に、

わたしの身体は、沸騰したみたいに

更に熱くなっていった…

そんな、わたしを

優しい眼差しで見つめる

翼くんの口元には、

笑みが浮かんでいて、

わたしも、笑い返した。

楽しい時間は、あっという間で

すっかり外は夕暮れに染まっていた。

そろそろ帰らないと…

壁時計を見ると、時刻は18:30を

指している。

「翼くん、わたしそろそろ…」と、

声を掛けると、お母さんが、

残念そうに、眉を寄せている。

「あら、もう帰るの?

お夕飯、食べていかない?

もし、ホームの方が良いって言って

くれるなら…ねぇ、お父さん」

「あぁ、そうだな…

流羽ちゃんが良ければ、1度

連絡して、聞いたらどうだい?

もちろん、帰りは車で送ってあげるから」

思ってもない、お誘いに

わたしは、どうしていいものかと

思った。

「でも…せっかくの家族水入らずに

お邪魔なんじゃ…」

連絡さえしていれば、愛子さんは

きっと許可してくれるだろうけど、

こういう、お誘いは

璃子のおじさんやおばさん以外に

された事がないから、なにが

正解なのか、わたしには正直

分からない。

「とりあえず連絡してみたら?

許可してくれたら、

うちで食ってけばいい」

翼くんに言われて、とりあえず

ホームに連絡を入れることにした。

トゥルルル…トゥルルル…

「はい、光ヶ丘ホームです」

「愛子さん?わたし、流羽だけど。

うん、それでね…

お夕飯に誘ってもらったんだけど…

うん、そう。

本当?ありがとう!

分かった、うん。

じゃあね!」

話終えたわたしは、翼くんに

駆け寄って、許可が出たことを

伝えた。

「じゃあ、今日は

流羽と一緒にメシ食えるな」

頭を撫でる、翼くんが笑ってくれて

わたしも笑って頷いた。

わたしにとっての家族は、

ホームのみんなだけど、

今日は桐生家の一員になれたようで

すごく嬉しい!

そして、お母さんのお手伝いを

したり、テーブルを囲んで楽しく

会話をして、家族の温かさを感じた。

お夕飯の後片付けを終えて、

帰る頃には、外はすっかり

夜の世界で

小さな星がよく見える。

また遊びに来てねと、送り出して

くれた桐生家の皆さんに、

お礼をして、家をあとにした。

ホームまで送ると言ってくれた

翼くんと、手を繋ぎながら

ゆっくりと歩く。

「今日は、とっても楽しかった!

誘ってくれて、ありがとう」

翼くんが、優しく育ったのも

うなずける気がする。

「また、誘うから」

「うん!」

楽しかった今日のことを、

思い出して、自然と顔が緩んだ

わたしに、真剣な表情で

話しだした翼くんは、視線を前に

向けたままで、言った。

「今日のアレ…

冗談抜きで、本気だから」

「えっ?アレ?

…なんの話?」

首を傾げたわたしに、

翼くんは立ち止まって、手を引き

わたしを抱き締めて…

「俺らは、こうならないようにって

言ったろ?

いつか必ず、嫁にもらうから」

「え…冗談だと思ってたよ。

でも、本当にわたしでいいの?

他に素敵な人が見つかるかも…」

腕の中から、見上げて

尋ねると、静かに唇が重なった。

「…ん…」

唇が離れると、翼くんは

熱のこもった瞳で見つめて、

「流羽でないと無理だから。

流羽以外はいらねぇ。

だから、いつかの時がきたら

改めて言うから…

今は、予約だ」と、

素敵な未来の約束をしてくれた。

その、いつかの時がきたら…

永遠に一緒…の約束をしようね。

「うん!

わたしも翼くんじゃなきゃ駄目。

絶対、お嫁さんにしてね!」

抱き締め合いながら、

未来の約束をしたわたし達の

遥か遠い星が、キラキラと輝いていた。

この景色、絶対忘れないよ。