先生に言ったこと…

半分は本当、でも半分嘘…

事実、やはり昨日の全力疾走が

いけなかったのか、ソケットを

外しても、ヒリヒリするのは

治らない。

わたしは壁づたいに歩いて

氷嚢を作り、足に当てながら

校庭から聞こえる賑やかな声を

ぼんやりと聞いていた。

本当なら今頃、わたしも

みんなを応援してたはずなのにな…

みんな、練習の成果

出せてるといいな。

感覚が無くなって

冷たくなった足を

布団に入れて、

わたしは横になった。

真っ白な天井を見上げながら

わたしはいつのまにか寝てしまった。

「…羽、流羽」

誰かがわたしの名前を呼んでる…

誰?

はっきりしない意識の中

わたしの手を握りながら

名前を呼ぶ声…

ゆっくり目を開けると、

そこにいたのは

璃子と聖奈ちゃんだった。

「璃子…聖奈ちゃん…」

わたしの声に2人は

安心したように笑顔になる。

「先生から聞いたけど、足の具合

悪いんだって?大丈夫なの?」

「うん…昨日ちょっと

走っちゃって」

璃子の眉間に皺がたくさん…

心配かけちゃったんだな。

「璃子…そこ」

わたしは自分の眉間に

人差し指を置いて

寄ってるよと教えてあげた。

「ははっ!本当だー!

めちゃくちゃ皺寄ってるー!」

聖奈ちゃんもわたしと同じポーズを

取って爆笑している。

「もうっ!2人して笑わない!!」

プンプンしながらも

眉間の皺をほぐす璃子に、

また笑いが込み上げ

3人一緒に笑い合った。

そのあとすぐ、

足の具合も今朝よりは

良くなっていたから、

3人で教室に戻った。

入るなり、お弁当を

食べていたみんなが

一斉に振り返り押し寄せてきた!

何事かと呆気に取られていると…

「あー!春瀬戻ってきたー!

足の具合大丈夫か!?」

「春瀬さん、大丈夫!?

すっごい心配したんだよー!」

一斉に始まった質問攻めに

わたしは笑顔で

大丈夫だよと答えると、

それを見たみんなから

なぜか拍手を送られ、わたしは

璃子と聖奈ちゃんに首を傾げる。

「みんな、流羽が保健室居るって

先生から聞かされた時にね…

シンクロかっ!って

ツッコミたくなるくらいに同時に

席立って、教室飛び出そうとした

くらい心配してたんだよ?

特に…桐生がね。

あいつ、超焦ってんの!」

璃子は小声でわたしに耳打ちする。

えっ…桐生くんが?

わたし今朝、酷いことしたのに…

どうして…

「そうそう!

あれはレアな桐生だった!」

「そうなんだ…」

今朝のことを考えると、

桐生くんをまともに見れない。

視線を感じるも

わたしは気付かない振りをして

3人でご飯を食べ始め、

わたしは考えていた。

桐生くんに対して

あんな酷いことをしたのは

今回が初めてだったんじゃないかな…

いっそのこと嫌いになってくれたら…

今、頭の中に浮かんだことを

わたしは実行するべきなのかもと

思いついた。

どうすれば

桐生くんはわたしを嫌いになる?

無視する?

…ってクラス委員だから

無視は出来ないか。

だったら、理不尽な理由で

部活辞める?

そもそも理不尽な理由が

思いつかない!

あぁ…どうしたらいい?

頭を抱えて机に突っ伏した瞬間…

勢いよく頭を下げてしまって、

「痛っーー!!」

おでこを強打してしまい、

ズキズキするおでこを

さすっていると…

一瞬の間のあと、

クラス中が大爆笑に包まれた。

もうーー!

恥ずかしいーー!!

「それ、流羽の十八番じゃん!」

「自己紹介の時もやってたよね!

あれマジ最高だったよ!流羽!」

璃子と聖奈ちゃんは2人して

わたしをいじってくる。

おでこをさすりながら

2人を睨みつけても、可愛いの一言で

片付けられ、

「意味分かんないっ!!」

怒ってるのに可愛いとか

本当に意味分かんないよっ!

わたしはふてくされて

そのまま今度こそ机に突っ伏した。