翼くんのお誕生日にと用意して

あったリストバンドを贈り、

次の日から早速着けてくれた

のを見て、自然と頬が緩む。

パコーン!!

「っ!い、痛い…」

そんなわたしを見て、メガホンを

振り下ろす璃子。

「ニヤニヤしない!

もうすぐ公式戦だよ!?

嬉しいのは分かるけど、

そういうのは部活が終わってから」

「はい!」

敬礼の真似をするわたしに

呆れ顔の璃子。

そう…

璃子の言う通り、冬休みに

入ってすぐに地区予選が始まる。

相模先輩達にとっては、それが

最後の公式戦。

ここにいるバスケ部のみんなで

出来るのも残りわずか…

なんとしても全国に進む為、

翼くんはもちろんのこと、

部員全員が日夜練習に励んでいる。

そんな頑張るみんなの為に

マネージャーのわたしが出来る事…

それは、日々書き続けていたノート。

得意とする事、苦手な事、

今まで行った練習メニュー…

その人の特性を活かす為に

一条先生が出したアドバイス。

これをみんなに渡して、

地区予選に向けて頑張って欲しい。

役に立つかは分からないけど、

頑張るみんなに高みを目指して

欲しいから。

部活後、1人1人にノートを

渡していく。

「役に立つかはわかりませんが、

皆さんの頑張りが記されてます。

より上を目指す皆さんに

出来るのはこれくらいなので…

良かったら目を通して下さい」

みんなは、そのノートを

受け取り喜んでくれた。

「あー!俺の苦手な位置からの

シュートの確率と得意な位置からの

が書かれてる!」

「俺のには、一条先生からの

アドバイスと改善点が…」

みんなが興奮するのを見ていると

璃子が呟いた。

「流羽、すごいね…

30人全員の分をよく続けて

こられたね」

「だって、頑張ってる人達の

中で、わたしだけ適当になんて

できないもん。

マネージャーは部員を

サポートするのが仕事でしょ?」

「だね!応援も頑張ろう!」

璃子の言葉に元気よく頷いた。

それからの日々は本当に

目が回るほど忙しかった。

でも、頑張ってるみんなを

見ていたら、自分も

頑張らなきゃって思った。

そして迎えた地区予選初日…

わたしは体育祭の時と同様に

部員30人分の名前入りミサンガを

手渡した。

「これは、一緒に戦う事は

できないけど、マネージャーの

わたし達が勝利を願って作った

念入りのミサンガです。

わたし達はコートに立てないけど

ベンチから応援してるので!」

受け取った部員みんなが

わたしと璃子を取り囲み、

円陣を組んで…

「「俺たちのマネージャーの

想いに応えられるよう、

気合い入れて行くぞー!!!」」

コートでウォームアップする

輪から離れて翼くんが駆け寄って

来た。

「流羽、ノートもミサンガも

ありがとな。

絶対に勝つから、見ててくれ」

「うん!ベンチから

見てるから。

頑張ってね!」

口元に笑みを浮かべる翼くんに

わたしは笑顔で送り出した。

そして、わたし達の戦いは

始まった。