あー厄介なことになってしまった。

最後のターゲットは、私のやっていることをうすうす感づいているようだ。

「どうしたの?そんなしかめっ面して」

「柚姫ー会いたかった!!」

川井柚姫(かわいゆずき)。この子は、1年の時からのクラスメート。
私が一番最初に攻略した、お人よし。
私には心を許せる友達はいないし、柚姫にだってそれは同じことだ。
けど、柚姫がいい人だってことはわかってる。

私は少し後ろめたさを感じながらも、いつものように自分のことへの質問を受け流した。

「私のことはいーの!ね!それより柚姫はなんかなやみごとないの?」

「...えーと...実は...」

柚姫は困った顔で私にいろいろ相談してくれる。

そして決まってこう言うのだ。

「ありがと!ほんと奏ちゃんは頼りになるなー!大好き!!」

と。

でもねごめんね柚姫。

私があなたの相談にのるのは、好感度を上げるためなんだ。

ーそんなうわべだけの友達に仲良くとか言ってんのか

突然、今朝の出来事があたまをよぎり、
心が締め付けられたように少し苦しくなった。

前までならこんな気持ちになることなんてなかったのに。
好感度が上がってうれしいはずなのに。

どこか後ろめたさを感じながらも、着実に上がっていく私の株。

柚姫の相談にのるようになってから、みんなから話しかけられるようになった。

...でも私は...みんなに好かれるような人間じゃない、本当は...醜いんだ。

あーもう!こんなこと考えちゃだめだ!
大丈夫私はちゃんと好かれている。

必死に自分を励ましていると、誰かの気配がすごく近くにせまってきていた。

「またやってんだ」

さっき聞いたばかりの瀬賀の声だった。

そしてすれちがいざま、私の耳元、息がかかりそうなほど近くで

「ポイント稼ぎ」

と。

私はかあっと頬があつくなるのを感じた。

今まで誰にもばれなかったのに。...なんで..なんで!

恥ずかしさはあっというまに怒りに変わった。

あのポーカーフェイスで私を馬鹿にして!!!!!