味方になってくれるだろうと踏んだのか、深月に泣きつく進藤くんだったけど、頼った相手はさっと後ろに下がって彼の手を避けた。
さすが深月。女子だけじゃなく、後輩にも容赦なく冷たい。
「俺も部活だ。がんばれ進藤」
「そんなこと言わないでくださいよ~!」
「あ、美咲ね、進藤くんが覚えてなかったら悲しいから顔合わせる勇気なくて、あたしに頼んできたんだってさ」
追加情報に、進藤くんがさっと頬を赤らめる。
あたしにラブレターを託す美咲の姿を、想像したのかもしれない。
「え、あ……そうなんすか」
「なかなか健気だよね。それじゃ進藤くん、よろしく!」
「あ、ちょ、待ってくださいせんぱ~い!」
相談なんてされても困るので、あたしと深月は示し合わせたように、そろってダッシュで逃げ出した。
背中に後輩のかわいそうな声が響いていたけど、お互い聴こえないふりをしてその場を去る。
仕方ない。あたしたちはものすごく、急いでるんだから。


