君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


キョトンとする進藤くんに、あたしは水色の手紙を押し付けた。

反射でそれを受け取った進藤くんは、困ったようにあたしと手紙と深月を順番に見る。


「それ、君へのラブレターだから!」

「へ? ……ええっ!?」

「あたしからじゃないよ、言っておくけど。友だちに頼まれたの」

「頼まれたって、誰に? 先輩ですよね? 俺、矢田先輩以外に顔見知りの先輩っていないと思うんすけど……」


人違いじゃないかって手紙を返そうとしてくるから、慌ててその手ごと押し返す。

あたしは渡すだけで、返品受け取りはしてないんだよ。


「顔見知りってわけじゃないみたいだよ。喋ったことはあるらしいけど」

「えー……わかんないっす。うえの……み、さき?」


水色の手紙を裏返し、書いてあった差出人の名前をたどたどしく読み上げる。

幼さの残る、少し丸い頬を赤らめる進藤くんは、年下らしい可愛らしさを持っていた。

茶髪で制服を着崩して、ちょっと悪ぶってるところがまたかわいい。


「なんか、進藤くんが入学してすぐ、助けてもらったんだって。自転車置き場で。覚えてない?」

「自転車置き場? あー……ああ! もしかして、自転車すげー倒しちゃった人!?」