君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている





部員がみんな帰った後の剣道場に、バカみたいに大きな笑い声が響いていた。


「ちょっと、深月! 笑いすぎ!」


掃除で使っていたモップを構え、大笑いしている男に振り下ろしたけど、それは相手の持っていたモップの柄で受け止められる。

思わずチッと舌打ちが漏れた。

あたしより数段実力が上だから仕方ないけど、こうもあっさりと止められると腹も立つ。


「しょうがねぇだろ~。笑うなっつー方がムリ」

「あんたは笑いすぎなの!」

「だってお前、ダチにラブレター押し付けられて逃げられたって。しかもそれをダチの代わりに渡すって、アホだろ!」

「アホって言うな! あたしだって好きでやったんじゃないっての」


ダンッとモップを板張りの床に突く。

同じ剣道部員でクラスメイトの矢田深月は、そんなあたしに余計笑いを強めた。

ムダに縦に伸びた身体を丸めて、ヒーヒー言っている。


汗に濡れた長い前髪が、濡れて黒く光っている。

こいつの髪も、ムダに綺麗だ。あたしの好きな髪とは、だいぶ違うけど。