クールにそう言うと、山ナントカ先輩はさっさと教室棟の方へと歩いていった。
振り向くことなく消えた背中に感心して、何度もうなずいていまう。
かっこいいじゃん、山ナントカ先輩。
加奈子は見る目があるのかもしれない。
本当によかった、受け取ってもらえて。
これで教室に帰っても加奈子と顔を合わせられる。
ひとりひと気のない教科棟に残されたあたしは、やっと安心して肩から力を抜くことが出来た。
窓から吹き込む風は爽やかで、疲れたあたしをなぐさめてくれる。
「はー、やれやれ。えらい目に遭った」
あとで加奈子になんか奢ってもらわなきゃ。
ちょうどアイスが食べたいと思ってたんだ。
先輩に遅れて、教室棟へと廊下を歩き出そうとして、思い出した。
「……あ。そうだ、山岡先輩だ!」
声を上げると同時に、静かな渡り廊下に予鈴の音が響き渡る。
加奈子の想い人の名前を思い出してすっきりしたところで、あたしは廊下を駆けだした。


