本当にいいの?
受け取ってもらえないなら仕方ない、あきらめようって、それをあたしが決めていいの?
「……わかったとは言ってないし、満足もしてないし、あんたのことはどうでもいい」
「どういう意味だ。っつーか、巻き込んどいてどうでもいいってふざけんなコラ……って、オイ! どこ行くんだよ!」
練習始まるぞって叫ぶ深月の声を置き去りにして、あたしは走った。
翻る袴に足をとられながら、鮮やかな緑の人口芝の上を。
もうすぐ越智くんに追いつくと思った時、背中から強く風が吹いた。
あたしの短い髪と剣道着の袖を乱し、それから手の中の薄桃を奪っていった。
「ああ……っ!?」
晴れた空へと舞い上がる手紙を目で追いかける。
青のスクリーンに、あの日の光景が映し出された。
あたしの手からすり抜けて、汚れた地面に落ち、雨に濡れた手紙が。
ひらりひらりと踊りながら、千世の手紙は越智くんの方へと流れていく。
落とすもんか、絶対に。
「越智くん……っ!」


