君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


この手紙だって、きっと何度も書き直しただろう。

上手く告白する自信がないから、手紙にするんだって意気込んでた加奈子を思い出す。


ラブレターなんていつの時代の化石だよって、あたしも含めみんな笑ったけど……。


託されたいまはそんな風に笑えなかった。



「そういう加奈子の気持ちは、否定しないでやってほしいんです」


黙ってしまった山ナントカ先輩に、気まずい思いをしながらラブレターを差し出した。

山ナントカ先輩は、手紙をじっと見たまま動かない。


はやく受け取ってよ。
これはあたしには、重すぎる。


居心地の悪い時間がしばらく続いたけど、やがて山ナントカ先輩はあたしの手から、加奈子の手紙をそっと抜き取っていった。

途端にふわりと、両手が軽くなる。


驚いて先輩を見上げたら、何か諦めたような顔をして笑っていた。


「わかったよ。友だち思いの後輩に免じて、この手紙はもらっとく」

「え。あ……ありがとうございます!」

「昼休み終わるから、君も早く教室帰った方がいいよ」