君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている



「直接告られたら、その場で断るだけでいいからまだ楽だけど、手紙とかは正直迷惑なんだ」

「……なかなかひどいね」

「だろ? 俺ってそういう奴なんだよ。だから受け取らない。答えはそれで充分だよね?」


手紙ごとあたしの手を押し返して、越智くんは自嘲的に笑った。

練習始まるからと、青い背中を向けて彼が歩き出す。


引き留める言葉は見つからなかった。

だってきっと、越智くんには何を言っても手紙を受け取ってはもらえない。


手の中の封筒を見下ろして、もういいじゃんと思った。

あたしはちゃんと、約束通り渡そうとした。

その結果どうなっても文句言わないでよって、千世にはあらかじめ断ってある。

なら、受け取ってもらえなかったとしても、何の問題もない。




「これで満足か?」



それまで黙って後ろに立っていた深月が、静かにそう聞いてきた。

すっかり深月の存在を忘れていたけど、それを言ったら怒られそうだ。