加奈子の手紙を渡した山岡先輩も、あんまり嬉しそうじゃなかった。
本人が渡さないのって、そんなにいけないことなのかって、ちょっと驚いたくらいだ。
でもこうして越智くんもいい顔はしてないし、気持ちのいいものではないんだろう。
あたしはこういうの、もらったことがないからちゃんとはわからないけど。
本人から受け取るのと、誰かを介して受け取ることの明確なちがいも、やっぱりわかってないんだと思う。
本当に、どうしてあたし、こんなことしてんだろ。
「別に、小島さんが謝ることじゃないよ」
「うーん、でも結局引き受けたのはあたしだし」
「けど俺、受け取れないから」
越智くんはきっぱりと、そう言い切った。
ためらいとか、遠慮とか、そういう色は一切混じっていない。
そんな声にギクリとした。
「だから、謝んなくていいよ」
越智くんの大き目の瞳は、真っすぐにわたしに向いていた。


