さっき声をかけた時以上に、戸惑った顔であたしを見てくる。
「これって……その。小島さんから?」
「あ、いや! ちがうちがう! あたしじゃなくて、友だちに頼まれて!」
手を振り首を振り全力で否定すると、越智くんはほっとしたように肩の力を抜いたように見えた。
けれど次の瞬間には、冷めたような目をしてあたしの持つ手紙を見下ろしていた。
「友だちに代わりに渡してくれって頼まれて、わざわざ持ってきたの?」
「え。……う、うん。断ったんだけど、どうしても勇気が出ないからって」
「ふーん。剣道小町って、けっこうお人よしなんだ」
さっきまで人好きのする笑顔を浮かべてたのに、いまは見る影もない。
高くて厚い壁が、越智くんの前に急に現れたのがわかる。
「あの……ごめん」
「……なんで小島さんが謝んの?」
「だって、嫌な気分になったんだよね? 悪気はないんだけど、こういうのあんまりよく思わない人もいるっていうのは、あたしもわかるし」


