君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


「ちょっと! ボコボコになんてしてないし! やめてよ変な噂立つじゃんっ」

「すでに立ってるから変なあだ名がついてんだろ。まあ、俺や主将に比べりゃ全然だけど、強いっていう意味では褒めてんだろうからありがたいと思っとけば」


本当にこの男は、いちいち人をイラッとさせる天才だ。

余計なひとことが多すぎる。

ひとことどころか、ふたことみこと、毎回くっついてくる。


「はあ……虚しくなってきたからもういい」

「え。なんかごめん。別にバカにしてるとかじゃないんだけど」


申し訳なさそうな越智くんの顔に、ほんのちょっと癒される。

越智くん、いい人だ。

加奈子に続き、千世もなかなか見る目があるのかもしれない。

少なくとも、アホ深月より数倍優しくてイイ男だと思う。


「いいのいいの、気にしないで! あ、それで本題なんだけど。越智くんに渡さなきゃいけないものがあって」


薄ピンクの手紙を差し出すと、越智くんは急にピタリと動きを止めた。