君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


「あれ、知らない? けっこう有名だよ。剣道小町」

「はじめて聞いたけど……それ、あたしのこと?」

「そうそう。剣道部ってさ、外周走る時も袴姿だったりするじゃん。目立つからさ、走ってる小島さん見るとみんな言うよ。剣道小町だって」


ちらりと隣りを見ると、気づいた深月が肩をすくめた。

知ってたな、深月は。


あたしにも優ちゃんの“剣道部のプリンス”みたいなあだ名があったなんて知らなかった。

ちょっとテンションが上がってしまう。


「ねぇねぇ、それって良い意味だよね? 男くさい剣道部の中の紅一点、みたいな。アイドル的なさ」

「ばーか。お前それは図々しいぞ」

「えっ。ちがうの?」


越智くんに問いかけると、困ったような笑顔を返された。

ちがうのか……。


「俺が聞いたのは、剣道部唯一の女子が、めっちゃ強いってやつだったな」

「男と同じ扱いだし、並みの野郎じゃボコボコだからな」