君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


本人目前にして逃げ出したんだから、そう思われても仕方ない。いまごろ逃げた加奈子も後悔してそうだ。


あたしだってびっくりだし、山ナントカ先輩みたいに呆れる気持ちもないわけじゃないけど。

でもあの子が毎日毎日、山ナントカ先輩のことを校内で探して、見つめて、キャーキャー言って笑って。

時には悩んだりため息ついたりしてたのを知ってるから。

すぐ近くでそれをずっと見てきたから。


だからこそ、この手紙がものすごく重く感じるんだ。軽いわけないって、思っちゃってるあたしがいる。



「……加奈子の話は、毎日毎日、うんざりするくらい山……先輩のことでした」


先輩の姿がひとめ見れただけで、その日一日笑顔が絶えなくなるくらい、あの子は山ナントカ先輩が好きなんだ。

あたしにはそういうの、よくわからないけど。

でもその気持ちが軽かったとは、とても思えない。



「逃げたのは、憧れの山……先輩が目の前にいることに緊張して、耐え切れなくなったんじゃないかなと思うんです。たぶん……いや、絶対そう」