君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている





「何で俺が付き合わされなきゃなんねーんだよ」


腕を組みながらついてくる深月は、さっきから文句ばかり言っている。

仏頂面の上にさらに「不機嫌です」って書いてあるような顔で、あたしを見下ろしてきた。


「しょーがないじゃん。あたし越智くんて人の顔、わかんないんだもん」


放課後、いつもより急いで剣道着に着替えたあたしは、渋る深月を引っ張ってグラウンドに向かっていた。

目的は昼休みのアレ。

頼まれてしまったラブレターを、宛先人、つまり千世の想い人に受け渡すこと。


「だから、何で同級生の顔がわかんねぇわけ?」

「同級生でも、越智くんと同じクラスになったことないし」

「それでも普通、顔と名前くらい知ってるもんだろ。お前はどんだけ他人に興味がないんだよ」


バッサバッサと勢いの良い足さばきで袴をはためかせ、深月があたしの前に出た。

歩き方にも苛立ちが現れている。