「不思議でならないわ。普通はラブのひとつも生まれるもんでしょ」
「あのねぇ。あたしはあの優ちゃんと、もう10年一緒にいるんですけど?」
「……うわ。いまので納得。白木先輩にときめかない女が、他の誰にときめくんだっつー話よね」
「わかっていただけて何よりです」
別にさ、深月がかっこいいのを否定してるわけじゃない。
黙ってれば整った顔してるし、そういう意味ではわかる。
顔を合わせればケンカばっかりだけど、剣道仲間としては嫌いじゃない。
一緒に練習して、優ちゃんについて語ってる時は楽しいし。口は悪いけど性格は悪くないのも知っている。
男とか女とか、やっぱり必要ないなって思わせてくれる存在だ。
深月も女は面倒だって言ってるし、その辺気も合う。
それで充分じゃん。
なのに……。
「越智くんて、誰」
『越智くんへ』とハート付きで書かれた手紙に、今日何度目かのため息を吐きかけた。


