ふと顔を横にズラすと、廊下側の席で男子と喋っている深月と目が合った。
「ばーか」と口パクで言ってきたから舌を出して返しておく。
ほら、これでいいじゃん。
男とか女とか、そういうのない方がきっと楽しい。
「あんたたちって、ほんと仲良いよね」
あたしたちのやり取りを見ていたらしく、樹里がどこか感心したように言った。
「いや、どっちかっていうと仲悪いでしょ」
「どこが? 歩ってなんだかんだ、矢田くんと毎日一緒にいるじゃん」
「それは同じ部活だから仕方なく。っていうか、誤解招く言い方しないでよね~」
「だってあんなイケメンと四六時中一緒にいたらさ、どうにかならない方がおかしいでしょ。正直、ちょっとはときめいたりするんじゃないの?」
ときめく? 誰に? 深月に?
もう一度深月の方に目をやって、男同士でバカ笑いしてる顔を見る。
「ないね。ないない」
確信してはっきり言った。
うん、ない。


