「わかってる、わかってる。歩、よろしくね!」
あたしの話し、ちゃんと聞こえてんのかなあ。
晴れ晴れとした笑顔を向けられ、げんなりする。
千世はぽんとあたしの机に手紙を置くと、スキップしそうな軽やかな足取りで教室を出て行ってしまった。
そして加奈子はあたしに向かってグッと親指を立てると、自分の席へと戻っていく。
友だちの親指をへし折りたいと思ったのは初めてだ。
「歩。良かったの~?」
「しょうがないじゃん。はー……なんであたしに頼むかなぁ」
「頼りがいがあるて思われてんだよ。悪いことじゃないじゃん」
「樹里はもう、他人事だと思って……」
「だって他人事だもーん。がんばれ!」
長い髪をかき上げて、樹里が笑う。
大人っぽくて、色気がある樹里は、恋愛経験豊富だ。
サバサバしてるから好きでよく一緒にいるけど、正直あたしとは真逆の存在だと思う。


