「待って千世。……その手紙、どうすんの?」
「渡すのは、諦める。未練が残らないように捨てるよ」
悲しげに目を伏せて、千世は微笑む。
いやいや、自分で渡すっていう選択肢はないのか!
と思ったのはあたしだけみたいで、加奈子は涙ぐんで「わかる」とうなずいていた。
そこはわかんないでほしかった。
これじゃあ、完全にあたし悪者じゃん。
「……あーもう、わかった! 渡すよ! 渡せばいいんでしょ!」
結局、よせばいいのに、やけくそ気味にそう叫んでいた。
「あーあ」と呆れたような樹里の呟きが聴こえたけど、言ってしまったものはどうしようもない。
放ってしまった言葉は回収できないんだから。
「やったじゃん、千世!」
「いいの? 歩、ありがとう!」
「言っとくけど、ほんとに渡すだけだからね? 後のことは知らないから。受け取ってもらえなかったとしても、文句言わないでよ?」


