深月は言った。見ててわくわくしたんだと。
あたしの試合を見て、自分も剣道がやりたくてやりたくて、たまらなくなったんだと。
あたしのことを調べるうちに、優ちゃんのことも知ったらしい。
「白木主将に憧れて、尊敬してるのは本当だ。でも……きっかけは、お前だったんだ」
「ほ……本当に? ほんとにそれ、あたしだった?」
信じられなくて挙動不審になるあたしに、深月派ふかぶかとため息をついてうなだれた。
「あーあ。一生言うつもりなんてなかったのに、言っちまった」
「……ほんとなんだ?」
「本当だよ、本当。あーくそ、やっぱ言うんじゃなかった」
がしがしと髪をかき混ぜるようにして、深月が頭をかく。
いつもとちがう様子の深月の態度が、本当に本当なんだって教えてくる。
あたしが、深月を剣道の世界に引き入れた?
あたしが深月を、ここに連れてきたの?
乱れた髪の隙間から、うかがうように猫目がこっちを見てきて、ドキリとする。
「言いたいことは言った。……それで、お前はその手紙、どうするつもりだ?」
逃がさない、と目が言っている。
逃げるな、ちゃんといま、ここで答えを出せって。


