君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


「やっぱりお前はバカだ。大バカだ」

「はあ? ちょっと聞き捨てならないんですけど? せっかく書き忘れてるって教えてあげたのに、なにその言いぐさ」

「だからバカだっつってんだ」


疲れたようなため息を吐いて、深月がまた、返したばかりの手紙を差し出してくる。

あの時と、同じように真剣な目をして、差し出してくる。



「な、なに……?」

「宛名書かなかったのはワザとだ。別に書く必要ねぇし」

「はあ? それってどういう……」


「わかれよ、バカ。こんな恥ずかしいこと最後まで言えるか」



手紙を持ってない方の手で覆い隠そうとしていた顔は、なぜか真っ赤に染まっていた。

それを間近で目撃してしまったあたしにも、その赤みが伝染して、頬が熱を持ったみたいになる。


妙な間が、あたしたちの間に流れた。



「え……。ええっ!? え、あ、あれ!? うそ、あれっ!?」

「わかったら、さっさと受け取れ。奇跡を起こす確率100%なんだろ。責任とれよ」


押し付けるようにして強引に渡されて、あたしは信じられない気持ちで深月と手紙を交互に見た。


これってつまり、どういうこと? そういう、こと?