もうダメだった。

いまこんな風に優しくされたら、耐えるなんてこと、できっこない。



「優ちゃん……笑ってくれるかなぁ……っ」



内側に、長い間ため込んでいた苦しみが、熱と一緒にこぼれ落ちたのを感じた。

1滴流れると、そこから次々と、ダムが決壊したみたいに涙が溢れて止まらなくなる。


そのすべてが押し付けられた白いシャツに染みこんでいく。

雨と汗と混じって、吸い込まれていく。



「きっと大丈夫だ。だから、思いきり泣け」



そんなぶっきらぼうな許可をもらって、一瞬笑ったあと。

遠慮なく、泣いた。空まで届くくらいの声で、恥ずかしげもなく泣き喚いた。


周りの秀才たちの視線はすべて、抱きしめてくる深月の腕がシャットアウトしてくれたから、思う存分泣いてやった。



いつの間にか雨は止み、雲を切れ間から真っ二つに割るようにして、青空が顔をのぞかせている。

街路樹の脇に咲く青い紫陽花が、露をまとってキラキラと輝いていた。




あたしの中で降り続いていた雨が終わりを告げた日。

それは砂時計のガラスを割って、外へと飛び出した日と同じになった。


雨も自分自身も、これからはきっと、好きになれる気がする。



どうか手紙よ、無事に届いて。