見つめる先、智花の顔がゆっくりと、くしゃくしゃに歪んでいく。

泣き出す寸前の、子どもみたいな顔だった。



血の繋がらない、あたしとは似ても似つかない妹が走り出す。

まるで生まれたての動物みたいに、覚束ない足取りで。


向かう先の空は、雲の切れ間から差し込む光が、梯子のように下りていた。


まるで智花を祝福するような空だと思った。




「……はー、いてて」




小さくなっていく妹の背中を見送って、あたしはへなへなとその場に座りこんだ。

安心したせいか、身体のあちこちが急に痛いと叫び出している。


特に足首はズキンズキンと脈打つように痛んで、うまく歩けそうにもない。

これはくじいたかなと、濡れたアスファルトの上で考えていると、後ろに誰かが立つ気配がした。




「こんな道端に座り込んでんじゃねーよ、バカ」



そんな聞き慣れた憎まれ口に、ぽろりと苦笑が零れる。


「なんでいるかなー……」


座り込んだまま顔だけ上に向けると、不機嫌を極めたみたいな顔の深月がこっちをのぞきこんでいた。


大きな影は汗をかいて、肩で息をしている。もしかして、うちの学校から走ってきた?