君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


呆然と、智花はあたしを見つめたまま立ち尽くしている。

頭が追い付いていないといった感じだ。


「ごめん。全部あたしが悪い。手紙、渡そうとしたけど……土壇場で恐くなったんだ。この手紙を渡して、ふたりが彼氏彼女として付き合うことになったら、あたしはどうなるんだろうって」


想像でしかない寂しさに、勝手にのまれて間違えた。

弱い心はあっけなく負けて、あたしは嘘をついた。智花にも、優ちゃんにも。


「きっと3人じゃいられなくなって、楽しい時間が消えちゃうんだと思ったらもう、渡せなかった。ごめん、智花。ごめんなさい」


石像みたいに動かない智花の耳に、あたしの声は届いているだろうか。

不安になりながら続ける。3年分の懺悔はまだこんなもんじゃない。


「あたし……ほんとは気づいてたんだ。智花が優ちゃんのことを好きになってたのはもちろん、優ちゃんが智花に惹かれ始めてたことも。いちばん近くにいたからさ。あたしそういうの鈍いけど、なんとなく感じてた。だから余計に渡せなかったんだよ」


あたしは周りより、女子としての成長が遅かった。

だから変わってく周囲に余計に戸惑った。置いて行かれている気がして、怖ろしかったんだ。