君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


剣道歴10年の声が、通学路に響き渡る。

智花は同じ学校の生徒の視線を気にしていたけど、それよりもあたしの言葉の意味の方が気になったみたいだった。


「どういうこと……?」


困惑しきった智花の声に、あたしは意を決してポケットからそれを取り出した。


3年間引き出しの奥に眠り続けた、薄汚れた手紙。

ずっとひた隠してきた、あたしの罪。



「それ……もしかして、あの時の?」

「うん。友花の、ラブレター」

「何でそんなのまだ持って……。捨ててって言ったのに」

「捨てられるわけないよ。だってあたし……嘘ついてた」


正面から血の繋がらない妹を見つめた。

どんな目で見られても、目を反らさないと覚悟を決めて。


「ずっとずっと、智花に嘘ついてた。ごめん」

「だから、何が」

「優ちゃんが受け取ってくれなかったって言ったの……あれ、嘘。嘘だったの」

「……え?」


「本当はね。本当は、優ちゃんに見せてすらなかった。渡さないで、そのまま返そうとしたんだよ、あたし」



智花の瞳が驚きで見開かれる。

疑ったこともなかったって、その目が言っていた。



「優ちゃんは知らないの。この手紙のこと。だから智花は、本当はフラれてなんかないんだよ」