君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


ぐんと強くペダルを踏みこみ、自転車で駆けだした。

顔にぶつかるのは小雨でも、スピードが出る分痛いくらいに感じる。


でも速度を緩めるつもりはない。多分時間ギリギリだから。

少しでも早く。1分1秒でも早く、この手紙を届けたかった。


無心で足を動かしていると、どこかで聞き覚えのある音が気がしてちらりと自分の制服を確認する。

電話だ。お母さんからかもしれない。

面倒だなあと思いながらも、片手でポケットに入れていたスマホを取り出した。


「もしもしっ?」

『お前、いまどこいんだよ!』

「深月!?」


予想してなかった相手に驚いて、スマホを落としそうになる。

なんとか持ち直して耳に当てた。車通りの少ない十字路を、勢いそのままに斜め横断しながら。


「いま、自転車で、移動中!」

『はあ? 移動ってどこ行く気だよ』

「妹の、学校! 渡さなきゃ、いけないものが、あるの!」


軽い上り坂にさしかかり、息が切れ始めた。上りで片手運転は、ちょっときつい。


『何だって急にそんな』

「急じゃ、ないから! ずっと、もう、3年も、引き延ばしてた、ことだから!」