あっという間に見えなくなる背中に、そういえばあの時も手紙を押し付けて、すごい速さで逃げていったことを思い出した。
そうかあ。加奈子の恋も叶ったか。
なんだか……肩の荷がひとつ、降りたような気持になった。
「良かったな」
「え?」
「奇跡が起きる確率100%って触れこみでいけば?」
深月の言い方に妙に棘を感じてハッとした。
そうだ、あたし深月のあの手紙、樹里に渡していないんだ。
まだ誰にも読まれないまま、あたしの机の引き出しに眠っている。
「深月、あの……」
何を言うべきかわからないまま口を開いたけど、同時に予鈴が鳴り響いてタイミングを逃してしまった。
深月はあたしから視線を外し、加奈子が去って行った方に歩き出す。
「おら、行くぞ」
「あ……うん」
広い背中を追って廊下を行く。脳裏にちらちらと、あの手紙が浮かんではあたしの心拍数を乱した。
手紙を渡さなきゃ。
手紙は書いたら届けるもので、しまっておいても何の意味もない。
隠したところで、そこに書かれた恋が消えることなんてないんだから。


