深月がうなるように言う。不愉快、というより困ってるみたいな感じだ。
「泣いて、ない」
まだ、泣いてない。涙は出てない。
そういえばあたし、全然泣いてないや。最後に泣いたのって、いつだっただろう。
優ちゃんが倒れてからあんなにつらかったのに、涙は1滴も出ていなかった。
自分でも不思議だけど、泣けないんだ。
「泣いた方がいいって言っただろ」
「すぐ泣く女は嫌いなんでしょって、言ったじゃん」
笑って返せば、深月はムッとしたように眉を寄せたあと、やけに真剣な顔であたしを見下ろしてきた。
深月の黒い瞳には、吸い込まれるような引力みたいなものがある。
優ちゃんの宝石みたいな瞳はただただ眩しくて、見ているだけで幸せな気持ちになるけど。
深月の瞳にはどうしてか、触れてみたくなるんだ。
「別に……嫌じゃない」
「は?」
「お前が泣くのは、嫌じゃない」
呆然と、深月を見上げる。
なんだか自分の好物を紹介するみたいな言い方だと思った。
「……え?」
それって、どういうこと?


