「え……なんで?」
「なんでって、あんたが出ないのにわざわざ行かないって。しかも今年は確か、九州でしょ?」
「うん。福岡」
「ムリムリ、遠すぎ! 1泊確定じゃん!」
そっか。樹里は行かないのか。
思わずほっとした自分に、まだ反省しないのかと呆れる。
優ちゃんだけじゃなく、あたしは深月にも依存してるんだ。それを最近強く自覚するようになった。
「それでも樹里は行くんじゃないかなって思ったんだよ。だって深月のこと……」
「歩。あたしは行かないって言ってんだから、納得しなよ」
あたしの言葉を遮って、樹里は少し強い口調でそう言った。
覚えの悪い子を叱るような言い方だった。
「まあ……確かに矢田くんのこと、ちょっといいなーって思ったりもしたけど」
「やっぱり。なんとなく、そうだろうなって」
「でもさ、県大会の応援行ったって言ったでしょ」
「うん。……うん?」
「だからさ、諦めた。とてもじゃないけど敵わないわ!」
やけに清々しい笑顔で樹里はそう言ったけど、あたしにはさっぱり意味がわからない。
どうして県大会が出てきて、諦めるって話になるの?