君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている





慣れ親しんだ学校の剣道場を出ると、見上げた空はいまにも振り出しそうな色に変わっていた。

湿った風が肌を撫で、汗ばんだ髪をいっそう重くしていく。


「……負けるって、こんなに悔しかったっけ」

「……当たり前だろ」


剣道場から出てきた深月が、掠れた声で答える。

決勝まで声を張り上げ続けた深月は、大会初優勝を飾った。


あたしは負けたけど、深月が勝ってくれたことにほんの少し救われた。そんなことを言ったら怒られそうだから、黙っておくけど。


「帰んのか」


あたしは制服だけど、深月は会場からここに戻ってきてまた剣道着に着替えた。


男子は明日、団体戦があるから少し練習していくらしい。

本当だったらあたしも手伝いたいところだけど……いまはちょっと、使い物になりそうになかった。


「ううん。……優ちゃんのとこに、行こうと思って」


深月は少し考える素振りのあと、短く息を吐き出した。


「わかった。ちょっと待ってろ。俺も行く」


そう言ってすぐ踵を返そうとする深月を慌てて止める。

まさか一緒に行こうとするなんて、考えてなかった。