君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


あたしがよりかかったせいで、誰かが倒れる姿なんてもう二度と見たくない。

大切な人をそんな風にさせたりはしない。絶対に。



「あたしは大丈夫。大丈夫だよ、深月」



はっきりと、決意表明みたいにそう言ったあたしを、深月はなぜか複雑そうな顔をして見ていた。




居残り練習のあとも、家に帰ってまだ練習した。

夕食をとってから、腹ごなしに狭い庭に出て、物置から打ち込み台を引っ張り出して。


マネキンを改造したそれは、中学の時にもらった父さんの手作り打ち込み台だ。

リサイクルショップで買った上半身だけのマネキンに、昔使ってた胴と面を着けて、土台を強化したそれは、実は部活で使ってる打ち込み台より使い勝手が良い。

女子の平均身長に合わせてあるし、打った感じも人相手にしてる時に近くて。お父さんには本当に感謝してる。


あたしが庭で練習してると、智花が帰ってくる。

最近はかなり遅く帰ってくることが多くて、さすがにお母さんが心配していた。

珍しく口論になったりもして、智花の変化にお母さんもお父さんも戸惑ってるのがわかったけど、あたしは口を出さなかった。


放っておいてって言われたのもあるけど……。

何より、あたしの言葉は智花に響かないのがわかってたから。