君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


稽古のあとの自主練も、あたしと深月で続けていた。

「いい加減帰れ」と止めてくる主将が不在なので、顧問が剣道場を閉めにくるまで思う存分竹刀を振っている。

地稽古3分を休みなく5セットやったあと、息が切れて膝をついた時。耳元で「オーバーワークだぞ」って優しくさとす声が聴こえたりする。

もちろん幻聴で、声の主はいま病院の無菌室ってところににいるはずだけど……。不思議と、優ちゃんの存在をすぐそばに感じる瞬間があった。



「やり過ぎだ、ちょっとは休め。……なんて優しいこと、俺は言わないからな。ケガだけはすんなよ」


ぶっきらぼうに深月にそんなことを言われた時は、思わず吹き出しちゃって怒られた。


優ちゃんがいる時は、口も性格も悪い腹の立つ奴だと思ってたのに。

優ちゃんがいなくなってからの深月は、気持ち悪いくらいおとなしい。


顔を合わせればケンカだったのに、いまは不思議と言い合いにならない。

なんだか随分落ち着いたなって、稽古にずっと付き合ってくれる深月を見るたび思う。


優ちゃんがいないいま、深月は誰よりも頼れる、安心できる存在になっている。


でも、同じ間違いは犯さない。

深月がどれだけ優しい奴でも、あたしはあたしの足で立つ。