君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


「優ちゃんにとって……あたしって、重荷でしかなかった? 手がかかる、面倒で邪魔な存在でしかなかったの? あたしにとって優ちゃんはとびきり大切な、家族なんかよりもずっと特別な人だったけど、優ちゃんにとってあたしは、簡単に切って捨てれるような価値のない存在だった……?」


確かにあたしは優ちゃんに与えてもらうばかりだったけど、あたしから優ちゃんにあげられたものなんて全然思いつかないけど。

ふたりで一緒だから得られたものは、生まれたものは、数えきれないある。そう思ってたのは、あたしだけだったのか。


無意識のうちに足が優ちゃんの方へ向かっていた。

でももう近づくことが出来なくて、気づいた時には小さな水たまりの上に立っていた。


優ちゃんはうつ向いたまま、力なく首を振る。


「どうせもうすぐクリーンルームに移動になる。そうなったら家族しか会えない」

「そんな……。それって、いつまで」

「もう……ひとりにさせてくれ。頼むから」



あたしにとってそれは、死刑宣告と同じだった。

涙も出てこない。


優ちゃんが顔を下に向けたまま、覚束ない足取りでベッドに戻っていく。

あたしはすれ違うように、入り口へと向かった。


そのままひとことも発することなく、病室をあとにする。

外へ出ると小雨が降っていた。

月は厚い雲の向こうで、夜道を照らす外灯も頼りない。

迷う余裕もなく、冷たいばかりの雨の中に身を投じる。


何も、言えなかった。でも……。


さよならだけは、口にしたくなかった。