いまあたし、叱られてる気持ちになっている。
優ちゃんの現状から目を反らして、大丈夫だと何の根拠もなく思いこもうとしていることを。
そしてそれはきっと、間違いじゃない。
「……白血病は細かくタイプが別れてる。俺の型は、予後不良ではないけど、良好とも言えない中間群だ。抗がん剤治療だけで細胞を死滅させられればいいけど、ダメだった時は移植になる」
「移植って、臓器移植!?」
「骨髄移植だ。白血病細胞を作ってしまう俺の骨髄を壊して、別の誰かの骨髄をもらう。それをする為にまた強力な抗がん剤を打つんだ。そうして健康な骨髄を移植しても、俺の体に馴染まなかったら正常な血液を作れない。兄弟がいれば俺に合う骨髄がもらえる可能性が上がるけど、俺は一人っ子だから。親戚に頼むか、骨髄バンクのドナーからもらうか、臍帯血っていう方法もある。でもそのどれもに拒絶反応のリスクがつく。まれに身体に合わなくて、そのまま死ぬこともあるそうだ」
勉強して覚えたことを暗唱するみたいに、優ちゃんは一気にしゃべった。
聞くことで精いっぱいで、半分も理解できてない。でも最後の、死ぬこともあるって部分だけは嫌なことにしっかりと耳の奥に残って、貼りついた。


