「抗がん剤は1度じゃ終わらない。まず2ヶ月で、白血病の細胞を5%以下に持ってくのが目標だ。そのあと今度はもっと強力な抗がん剤で、残っている白血病細胞を更に殺すのが約1ヶ月。それを入退院しながら何回か繰り返す」
想像していたよりもずっと長い治療期間に、言葉が出なかった。
夏には戻ってくるんだと思ってた。日常に、あたしの隣りに、優ちゃんの笑顔が戻ってくるって。
剣道部にも復帰して、インターハイには出られないけど、きっと深月が代わりに出場を決めるだろうから、その応援の席には優ちゃんもいるはずだ。そう、信じてた。
でも、優ちゃんの説明じゃ、今年いっぱいかかるかもしれないってことになる。
「そ、それが終わったら、完全に退院ってことになるの?」
「どうだろうな。そうなるかもしれないし、ならないかもしれない」
「ならないかもって……どういう?」
優ちゃんはそこで一端話を区切るように、長く息を吐いた。
忙しなく上下する胸を見てると、休んだ方がいいはずだとわかるのに、優ちゃんの言葉を止める気にはなれなかった。
聞かないと。一言一句、聞き漏らさないようにしないと。


