気まずそうにも、傷ついたようにも見える友だちのその表情に、ハッとして慌てる。


「や……ごめん。何でもない」

「歩」

「忘れて。ごめん」


足早に、樹里の脇を通り過ぎて廊下に向かう。誤魔化し笑いをする余裕もなかった。

自分の口元を覆って、ため息をつく。


すごい嫌味な感じで言っちゃった。最悪だ。

小姑みたいじゃん。深月からの手紙も渡さないで、ピリピリして、監視するみたいに。

こんな風になるなんて、予想外もいいところだ。こんなに嫌な気持ちになるなんて。


こんなんじゃダメだ。もっとちゃんと、剣道にだけ集中しないと。

ただでさえ優ちゃんのことで、気もそぞろになっているんだから。


深月と樹里と、それからあの手紙のことは一端忘れよう。頭から追い出そう。

何度も繰り返し自分に言い聞かせたけど、そうしないといけない時点でもうダメなんだって、頭のどこかでわかっていた。


廊下から見える空は今日もどんよりと重く、気が滅入りそうになる。

優ちゃんの笑顔が見たい。太陽みたいな笑顔を見れば、心の雲も一気に晴れるのに。


早くも幼なじみが恋しくて、たまらなかった。