大丈夫なの、なんて軽く聞けるのは、たいしたことないって思ってるからだ。大変なことになってるなんて、想像もいていないから聞けるんだ。

悪気があるわけじゃない。みんなそうだ。


「ああ、うん。まだちょっと検査入院してる」

「そうなの? 大会近いのに、大変だね。歩なんて白木先輩大好きだから、練習も身に入んないんじゃないの?」

「まあそれは、優ちゃんにもちゃんとしろって言われたから」

「ほんとに大丈夫~? あんたは先輩命だからなあ」


冗談っぽく樹里が笑って、あたしも笑い返す。

表面だけで笑うなんて芸当、自分に出来るとは思ってなかった。


「そうだ、剣道の試合って何時からやるんだっけ? 応援行くからね」

「え。……いいよ、応援は。前もどこで誰が試合してるのかわかんなかったって言ってたじゃん」

「あー、まあね。だって剣道の試合って、次々進んでくしみんな顔隠してるからさ。見分けつかないんだもん」


去年樹里や加奈子が試合の応援に来てくれたけど、最後まであたしがどこで試合をしているのかわからなかったらしい。

お母さんも昔よく、同じようなことを言っていたっけ。