君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている





朝練を終えて、着替えて校舎に入ると靴箱に手紙が入っていた。

またか、とため息をつく。『〇組の〇〇くんに渡してください』とメモがつけられたそれは、例のラブレターの依頼だ。

奇跡を起こす剣道小町なんて言われるようになって、こういう雑な依頼も来るようになった。

大会に向けて集中したいのに、こんな渡し方をされると断れない。


「休業しますって、放送でもかけよっかな……」

「なになに? なにをかけるって?」

「樹里」


不意に肩越しにあたしの手元を覗きこんできたのは、登校してきたばかりらしい樹里だった。

シャンプーの甘い香りが、さらりと揺れる長い髪からかおる。朝から汗くさいあたしとは大違いだ。


「まーたラブレター頼まれたんだ?」

「うん。いつまで続くんだろ、こんなこと」

「さあ……。ねぇ、それあたしが代わりに届けようか?」

「樹里が? なに言ってんの」

「だって歩、忙しいんでしょ部活。あ、そういえば白木先輩倒れたんだったよね。大丈夫なの?」


靴を履き替えながら、何気ない感じで樹里が聞いてくる。