君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


確かにあたしは優ちゃんがいないと、練習が身に入らないとか言ってすぐにサボってお見舞いに行きそうだ。自分でもそう思う。

実際優ちゃんに言われなかったらそうしていた気がする。深月に嫌味を言われても、どこふく風で。


仕方ない。優ちゃんに病院を脱走されても困るから、真面目に練習しよう。

練習のあと、間に合えば面会に来ればいい。それなら優ちゃんも怒らないはずだ。


「じゃあ、行くね。何かしてほしいこととか、ほしいものとかあったら電話して」

「いいって、母さんが帰ってきたし。……なら、深月に頼むって伝えてくれ。皆にも、大会前にすまないって」

「……皆、優ちゃんに謝ってなんてほしくないと思うよ」


あたしと同じで、早く優ちゃんが良くなることだけを願うと思う。皆優ちゃんが大好きだから。


「また来るからね」

「歩」

「うん?」


簡易椅子を片付けて、振り返る。

大好きな琥珀が、静かにあたしを見上げていた。



「……ありがとう。がんばれ」



白いカーテンで区切られた、小さな小さな空間で、優ちゃんは変わらず微笑んでいて。

やっぱり強いな。病気になっても優ちゃんは優ちゃんだって、ほっとした。


ほっとすると同時に、どうしてか、悲しかった。